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『MI:個性を生かす多重知能の理論』

5年ぐらい前のことになるでしょうか、ある先生に誘われて、ハワード・ガードナーという人の講演を聞きに行ったことがありました。当時の私はその人の名前も、その人の理論も聞いたことはありませんでしたが、講演の概要を聞いてみたところ何となく面白そうだったので誘われるがままに聞きにいきました。当時の私の英語力では(たぶん今とあまり大差ないと思うけど)長時間の講演の全てを聞き取るには限界がありましたが、その後、内容はともかく、少なくとも彼の名前と彼の理論の名前だけは忘れることはありませんでした。

で、数年が経過。私の研究分野とは直接的に関わらないものの、仕事の方には使えるかもしれないし、お鶴と遊ぶときにも何か役に立つかもしれない、ということで、とりあえず読んでみることに。購入から数ヶ月。読書強化月間をようやく設けることができたので、この本も日の目を見ることになりました。以下、読んでみての感想と簡単な解説を(ただし、あくまで私個人の解釈ですのでご注意を)。

それまで、「知能」というのは「IQ」のように数値的な測定が可能で、人間のあらゆる能力に適応する汎用的な1つのものであるという考えが一般的でした。ガードナー氏はそれに異を唱え、脳科学等のあらゆるデータから、いくつかのゆるやかに独立した「知能」があるという理論を提唱しました。それが「MI (Multiple Intelligences)」理論。現在までに最低でも8つの知能があることがわかっているそうです。すなわち、「言語的知能」、「論理数学的知能」、「音楽的知能」、「身体運動的知能」、「空間的知能」、「対人的知能」、「内省的知能」、そして「博物的知能」。ただし、これはあくまで現在わかっているまでのものであって、今後増えるかもしれないし、あるいは、人間以外の生物が持っている知能が発見されることもあるかもしれない、とのこと。

で、こういう考え方をするとどんないいことがあるかというと、「個性」や「個人差」ということに充分配慮した教育が可能になる、ということ、らしい。アメリカでは既にこの理論に基づき、様々な取り組みや研究が成されていて、ある程度の成功をおさめているんだとか(それと同じぐらい、怪しいものもあるみたいですが)。ただ、「個性」や「個人差」に対応した教育となると、それだけ時間も人員もかかるのが最大の問題。日本のように30人以上の生徒に一人の担任という画一的な教育システムでは、この実現はまず不可能。で、もう一つの大きな問題点は生徒に対しての評価。現在広く使われているような学力試験的なもののしようがないので、いわゆる5段階とか10段階のようなこれまで使われてきたような評価はまずできない。個人の観察記録的なものか、もしくは与えられた課題の難易度や完成度に応じての評価にならざるを得ない。つまり、国語や算数も、図工や音楽と同じ様な評価のされ方になる。ただ、そういうのに縛られない、幼稚園や保育園なんかでは、導入してみると面白いんじゃないか、と(かなりお金かかりそうだけど)。現代の日本の英語教育にありがちな問題点とすれば、「言語的知能」に偏りがちっていうとこでしょうか。それと同時に「対人的知能」や「内省的知能」も育む必要があるでしょうね。ちなみにこれら2つは、現代の多くの社会人にとっても重要だと、筆者は言っておられました(12章参照)。

こんなご時世だから、あまりお金をかけずに各家庭で実践していこうとすると、じゃぁどうしたらいいのか、ちょっと考えてみましょう。つまりは各知能を伸ばせるような環境を用意して、時に子ども自身に選択させ、時に親が指定して、遊ばせたり一緒に遊んだりすればいいんじゃないかな、と。例えば、お鶴(1歳8ヶ月)の場合、、、
・言語的知能:絵本の読み聞かせ、話し言葉・書き言葉の学習
・論理数学的知能:パズル
・音楽的知能:楽器を演奏する、歌を歌う・聞く
・身体運動的知能:ボール遊び、鬼ごっこ、箸・フォーク・スプーンを使って食べる
・空間的知能:積み木、ブロック、粘土、折り紙、絵、砂遊び、水遊び、散歩
・対人的知能:家族・近隣住民・お友だちとの触れ合い
・内省的知能:しつけ、何かの真似
・博物的知能:動植物など自然との触れ合い、料理のお手伝い
こうして考えてみると(いくつかのものは他の領域とかぶってるものもありますが)、結構普段から心がけていることが多いんじゃないかなぁ、と(保育園や幼稚園でも然り)。ただ、お鶴ぐらいの年齢の子どもにとって難しいのは、なんたって論理数学的知能。まずは簡単なパズルを通して鍛え(空間的知能と身体運動的知能も必要!)、もう少し大きくなったら将棋とかオセロ的なものでさらに鍛えてみたいですね。もちろん、数字をマスターしたら簡単な計算とかもやらせてみたいと思います。

現代の日本の都市部で難しくなってきているのは、近隣住民(特に家族以外の大人)との触れ合い、そして自然との触れ合いでしょうか。集合住宅では楽器の演奏なんかも、騒音問題によって制限されていますね。砂遊びやボール遊びができる公園も減ってきているんじゃないでしょうか。「しつけ」というのもまた難しい問題です。ここで言うしつけというのは、極々初歩的なもので、例えば、転んだときにすぐに助けずに自分で立ち上がるのを待ってから慰めたり褒めたりしてあげるとか、アレが欲しいと駄々をこねても我慢させる(そして我慢できたら褒めてあげる)とか、お手伝いやお片づけができたら褒めてあげるとか、悪いことをしたらすぐにその場で叱るとか、そういう簡単なことです。でも、共働きだとか、片親だとか、近所付き合いがないとか、様々な事情によって、それが簡単にはできないということが増えてきているんじゃないかなぁ(そして、その結果内省的知能が育たないということが小一プロブレムとか、学級崩壊とか、モンスターペアレンツとか昨今の諸問題の根本にあるんじゃないか、というのは飛躍しすぎか。笑)。

まぁ、要は、愛を持って接して(こういうのは論外)、手間暇かけてやって、昔からの遊びや現代の遊びを織り交ぜながら、時には一緒に遊び、時には一人で、時には友だちと遊ばせ、悪いことをしたらきちんと然り、良いことをしたらしっかり褒める。そういうことを、当たり前にやればいいだけのこと、なんだよね。昔はそれが当たり前にできる環境が自然と整っていたんだけど、現代の日本の都市部では、なかなかそうはいかないから、気をつけないと。

そうそう、本についてもう少し触れておくと、誤字脱字がそこそこある上に、日本語がどうにも直訳調で少々読みづらいところがありました。読んでみようと思う方はそのへん要注意です。

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[C1807]

>田舎物殿
そうですね。指導法とかは割と興味を持って開発や改善に取り組んでいる人は多いのに、評価やカリキュラムとなると、途端に魅力的でなくなってしまうんでしょうか。
  • 2010-03-05 10:31
  • 主宰
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  • 編集

[C1806]

結局は評価の問題が一番難しいと思いますね。
このような考え方は、特別支援教育では割と普通(というか、そうじゃないとできない)ですが、内実は・・・・?????ですからね(苦笑)

まぁ、評価の方法であるとか、カリキュラムであるとかを研究している人が数えるくらいしかいないのがつらいところですけどね
  • 2010-03-05 09:00
  • 田舎物
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